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【必読】クリニック開業でよくある後悔と3つの失敗事例

税理士法人G.C FACTORY.

クリニックを開業する際は、物件、医療機器、スタッフ選び、細かな備品選びまで100を超える決定を行っていきます。

その多数の決定について、失敗しないようにするために、今回は失敗事例をもとに対策を解説します。

※特に重要度の高いもの(金額、経営への影響が大きいもの)をピックアップして解説します。

1. クリニック開業準備のスタートダッシュに失敗した事例

開業準備のスタートは、開業コンサルタント選び又は物件選びからになるケースが多いです。

よって、そのスタートで失敗するとその後の開業準備のすべての過程に大きなマイナス影響が出てしまうので、スタートで失敗しないための事例を共有します。

(1) 開業コンサルタント選びの失敗例

開業コンサルタントのコンサルティングパターンとその見極め方については「【失敗しない】クリニック開業コンサルタントの選び方とポイント」で詳しく解説していますので、ご参考ください。

今回は、下記の2ケースを紹介します。

【case 1】 開業コンサルタントの比較検討をしない

比較検討等をせず、開業コンサルタントと契約をし、開業準備を進める過程でそのコンサル内容に不安を覚え、変更をしたいと考えた時には、すでに数十万円~数百万円の解約金が発生する契約になっており、切り替えができないケース。

このようなことが起こらないための対策としては、①事前に複数社を比較検討して決定すること。②契約前に違約金について事前に確認をしておくことになります。
詳しい情報は、過去のコラムで紹介しておりますので、参考ください。

【case 2】 開業コンサルタントによる業者指定がある

開業コンサルタント会社の紹介する会社(内装工事等)が指定されており、ドクターの負担が間接的に増えてしまうケース。

開業コンサルタント会社に依頼する際に、業者指定(内装工事等)がある場合、コンサルタント会社はその業者から紹介料をいただき、その分ドクターが業者に支払う見積りに上乗せされているケースがあります。

これは、ドクターからすると開業のコストが間接的に増え、開業費用が数十万円~数百万円増えている場合があるので、注意が必要です。

一方で、業者としては、紹介をいただくことで営業コストが下がるので、その分のお礼として、ドクターへの見積り金額とは関係なく、開業コンサルタントに紹介料をお支払いしているところもあります。

業者指定だから必ず注意が必要というわけではないので、見極めは必要になります。

見極める方法としては、開業の投資予定額が他のドクターと比べて異常に高くないか(医療機器、内装等詳細を比較)を確認する等になります。

(2) 物件選びの失敗例

物件選びの失敗例としては、【case1】事前準備不足による失敗【case2】賃貸契約内容の確認不足による失敗を紹介します。

【case 1】事前準備不足による失敗

物件選びの事前準備をしておらず、賃貸物件の仮申込後から本契約までの間に十分な検証や融資の確約までの時間がなく、先に賃貸契約をしたが、その後、融資が下りない(又は物件を変えたい)等の理由で途中解約をした際に、違約金が発生するケース。
※賃貸物件は一般的に仮申込をして1か月以内に本契約の期限があります。

不動産は、「生もの」と言われることがありますが、良い物件は一瞬で決まってしまいますので、良い物件が出てきた際に、正確な判断をするための事前準備はとても大事になります。

事前準備ができていないと、上記のような誤った判断をするケースや、逆に躊躇して物件が他にとられるケースがあります。

では、事前に行うべき準備について、下記の通り紹介します。

① 仮の想定物件で事業計画を作成しておく。

具体的な物件を見つけてから事業計画を作成される方もいますが、それでは遅いケースが多いです。

なぜなら、そもそも実現したい理想のクリニックについて、どれくらいの広さ・賃料の物件で、どれくらいの投資額(内装、医療機器等)であれば事業が回るのか(患者さんを何人診れば生活費も確保でき、返済ができるのか)のかを知ったうえでなければ、物件選びが的確にできないからです。

よって、弊社当社の場合は、物件選びの前に、まずは物件の仮のエリア、広さを想定してその場合の平均的な物件相場、設備投資額をもとに計画を作成します。これによって、具体的な金額の指標をもって物件選びができるので、効率的に物件を探すことができます。

② 融資の必要資料(確定申告書等財産関係の資料一式、医療機器の見積等)の用意。

融資の審査については、融資面談から仮の内定まで3週間ほど、確定まで1か月~2カ月ほどかかるので、物件がでてきてからイチから準備をしていると間に合わないケースもあります。

※時間的に厳しい場合は、オーナーが了承をしていただけるようであれば、賃貸契約書に融資の特約(借りられなかった場合、は違約金を発生せず、なしで解約ができる旨)をいれておくことをお勧めします。

融資の準備の多くは事前にできるので、良い物件がでたらすぐに申し込めるように準備しておくことをお勧めします。

具体的には、購入したい医療機器等の見積の取得や確定申告資料(過去3期分)等の財産関係の資料、趣意書等を用意しておくことになります。

③ 融資の専門家(税理士等)に事前に自己資産や自身の診療上の強み、投資額予定額、上記の事業計画等をもとに、いくらくらいまでなら借りられるかの所感を聞いておく。

投資額が大きい医療機関の開業においては、自己資金(親族借入)で開業する先生は、とても少ないので、そもそも、借入ができなければ開業できないことになります。

よって、どれくらい借りられるのかを事前に専門家に相談をしておくことで、物件選びや医療機器の選定等についても効果的に行うことができます。

もちろん、最終決定は金融機関の審査により決定しますが、当社弊社のように毎年100件以上の融資面談をしている場合は、審査のポイントを熟知しています。高い確率で借入の可否や借入可能金額、融資の難易度がわかりますので、事前にアドバイスをさせていただいています。

【case 2】賃貸契約内容の確認不足

賃貸契約内容を精査せずに契約をしてしまい、後で後悔をするケース。

賃貸契約書について、開業時にしっかりとリーガルチェックをしておらず、開業後に想定外の費用が発生する場合もあります。

具体的には、定期借家契約等で解約時の違約金を確認しておらずやむを得ない理由で解約をする際に多額の違約金が発生したり、5年や10年等の契約満了時に退去を命令されたり、都市計画等が数年後に予定されており(契約書には都市計画等の場合は、解約事由という記載があり)、数年で移転をせざる得なくなった場合などがあります。

移転の場合は、移転時の引越コストや再度内装工事として数千万円かかってしまう場合もあるので、焦って契約をする前にしっかりとリーガルチェックをすることをお勧めします。

2. クリニック開業におけるお金(借入金)に関する失敗

【case 1】運転資金不足の失敗

事業は、赤字の時に廃業するのではなく、資金がなくなった時に廃業しますので、資金に関する管理は事業継続の最も根本的な部分として重要になります。最も多い失敗事例は、当初の事業計画が甘かったために、開業後に資金が足りなくなるケースです。

金融機関は、開業時は融資していただけますが、その後に開業後数か月ですぐに足りないということになると、計画性がない事業者(又は経営悪化先)となるので、開業時より難易度がとても上がります。そうならないためにも、下記を注意して事業計画を作成する必要があります。

① 費用は網羅的に、かつ、多めに見積もる

後で、「こんな費用が掛かるはずではなかった(計画になかった)」とならないように、費用の計画は網羅的に入れる必要があります。

よく「その他費用」という内容が不明な数値が計画に入っている場合がありますが、そのような不明な数値が失敗を招く可能性があります。

弊社は会計事務所のため、開業後のクライアントの費用の実績をすべて把握しており、数十の細かな科目ごと(廃棄物処理費用やスタッフ室のお茶菓子代、学会費用まで)に費用計画を作成するようにしています。

資金が枯渇していくと精神的にもとても辛いので、固めの確実な計画はとても重要です。

② 損益計算書計画だけではなく、貸借対照表計画、キャッシュフロー計画まで作成する

事業計画で、損益計算計画(売上、費用等)は必ず作成しますが、資金繰り関係について作成していない場合は、途中で想定よりも資金が少なくなり、失敗するケースがあります。

なぜなら、医療の場合は、保険売上の入金が2か月後だからです(損益計画の売上発生時期と実際に預金が増えるまでの差が2か月ある)

この時期のずれによる預金残高差額が、保険請求の2か月分(数百万円以上)なので、資金的に命取りになる可能性があります。

よって、損益計画だけでなく、貸借対照表やキャッシュフロー計画等(実際のお金の流れのわかる計画)を作成することをお勧めします。

3. クリニック開業時のスタッフ採用に関する失敗

スタッフに関する失敗としては、【case1】雇い過ぎケース【case2】内定を早まって出してしまったケースについて紹介します。

【case 1】オープニングスタッフを雇いすぎのケース

事例として多いのは、雇い過ぎのケースです。

雇い過ぎた理由としては、「開業後採用するのは難しいと聞いたので開業時に多めに採用した」「数あるクリニックで選んで面接に来ていただいた人は、愛着がでてしまうので、良い人と思ってしまい、想定より多く採用してしまった」等様々です。

雇い過ぎた場合、後で解雇することは難しいので、採用定員は、慎重に判断する必要があります。

よくあるケースとしては、開業後に採用は難しいので、応募が多い開業時に看護師(衛生士等)を予定より多めに採用してしまうケースです。

しかし、開業当初数か月は、患者さんは数名~十数名しか来ないことがほとんどです。

そんな中で、ドクターと看護師(衛生士等)が数名いると、ほとんど何もしないでいい人が出てきます。

これにより、暇すぎて辞めるという人も発生することもあります(暇なことは忙しいよりきついこともあります)。

また、後で採用が難しいし、採用コストがかかるからという理由で開業時に余分にスタッフ(社会保険料・賞与その他費用含め35~45万円/月等)を数名雇われる方もいますが、それだけで、数か月合計で100万円以上(スタッフが余分な時期分の人件費その他福利厚生、制服費用等)余分に予算がかかってしまうケースもあります。

もちろん、退職リスク等を考慮して1名等多く採用するケースはありますし、初月から売上見込みが高いクリニックの場合は、機会損失にならないように多めに採用する場合もあるので、客観的・定量的に専門家の意見を聞きながら決めていただくことをお勧めします。

【case 2】内定を早まって出してしまったケース

面接時に良い人だと思い即決内定したが、後日もっと良い人と面接をし、内定取り消しを行い、60万円の損害賠償を支払ったケース。

自身が開院するクリニックに応募してきてくれることはとても嬉しいので、応募してくる人は良くみえてしまい、冷静に判断できないケースはあります。
※応募者も面接は、自己ベストでくるので、性善説で面接をすると冷静に比較・判断ができないケースも多いです。

そして、即決して採用の通知をしてしまい、その後にいい人がたくさん応募してきて、内定を取り消したケースです。この場合、内定取り消しに関する損害賠償が発生する場合があるので、注意が必要です。

対応策としては、面接をなるべく1日で行い(求人募集原稿にあらかじめ面接日程を記載しておくことで応募者に日程を事前に確保しておいてもらうことが可能)、全員を同じ日にしっかり比較検討できる仕組みにしておく等がお勧めです。

今回は、開業の失敗事例を紹介させていただきました。

開業時は、ものすごい数の決断をするので、その分失敗リスクは必然的に高くになります。

ここに紹介させていただいた失敗事例は氷山の一角で、他にも押さえておくべき論点は多数あります。

G.C FACTORYは、国内トップクラスの豊富な開業実績のある税理士法人・コンサルティング会社として、ドクターの開業、そして開業後の顧問まで一気通貫でサポートしておりますので、ご興味のある先生は、まずは無料相談をしていただければと思います。よろしくお願い致します。


筆者:山口 和真(税理士法人G.C FACTORY 代表社員税理士)

略歴

  • 九州大学 理学部卒業
  • 日本経営ウィル税理士法人を経て現職

実績・経験

  • 医科、歯科の開業支援件数を200件以上担当
  • 事業計画作成、融資、マーケティング、スタッフ採用、雇用契約、医療法人顧問、法人成り等の支援を経験
  • 医療コンサル国内最大手の日本経営グループにて、病院の経営顧問、会計・税務顧問、病院・介護事業所の事業再生業務、病院のM&A業務、医療法人の事業承継業務等に従事。
  • 2019年8月にC FACTORY会計事務所創業、創業5年間で約150件の開業支援を行う。

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