COLUMN

医院経営にまつわるコラムを定期的に配信しています。

法定監査業務

法定監査になる前に監査を受ける(任意監査)

任意監査 法定監査 監査が不安 適正意見 不適正意見 医療法人 社会医療法人 社会福祉法人

Ⅰ.はじめに

法律により義務付けられている監査を法定監査、義務付けられている対象ではないが、自ら任意で受ける監査を任意監査と呼びます。

法定監査については義務ですので、必ず会計監査人による監査を受ける必要があります。一方で任意監査に監査に関しては義務ではないので受けるか否かは経営判断になります。

本コラムでは任意監査を受けるメリット・デメリットについて解説していきます。

 

 

Ⅱ.法定監査の対象

医療法人や社会福祉法人においては、以下のように監査を受けることが義務付けられる法人が法律により定められています。

<医療法人>

  1. 最終会計年度にかかる負債額の合計が50億円以上、又は収益額の合計が70億円以上ある医療法人
  2. 最終会計年度にかかる負債額の合計が20億円以上、又は収益額の合計が10億円以上である社会医療法人
  3. 社会医療法人債を発行している社会医療法人
  4. 地域医療連携推進法人

病院 医療法人

 

日本公認会計士協会:https://jicpa.or.jp/specialized_field/20170127wsc.html

厚生労働省事務連絡:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000202001.pdf

 

<社会福祉法人>

  1. 最終会計年度における収益(サービス活動収益)が30億円を超える法人又は負債が60億円を超える法人

※今後金額基準が引き下げになる可能性あり

 

 

社会福祉法施行令(該当法令 第13条の3):https://elaws.e-gov.go.jp/document?

lawid=333CO0000000185_20220401_503CO0000000302

 

介護

医療法人、社会福祉法人とも上記のように金額基準においては最終会計年度における金額がトリガーとなっており、例えば2023年4月1日から始まる事業年度であれば2022年3月期の会計数値で判断することを指しています。

 

 

Ⅲ.任意監査を受けるメリット・デメリット

上述した監査対象の基準に該当しない法人でも任意に監査を受ける法人は多数存在します。

令和元年度の厚生労働省の調べでは会計監査人を設置している社会福祉法人500法人の内113法人(23%)が任意設置法人(任意監査を受けている法人)となっています。

 

任意監査を受ける理由としては様々あると思いますが、メリットとしては以下のような点が挙げられます。

【メリット】

① 法定監査の準備ができる。

いざ法定監査になってから会計監査をスタートし、適正意見の監査報告書がもらえないとなると問題であるため、事前に監査を受けることで法定監査時にも問題なく監査を受けることができる体制を整えることができる。

 

② 適正な財務諸表を作成し、経営判断に役立てる。

監査を受けることで信頼性のある財務諸表を作成することにつながり、経営判断をより精緻に行うことができる。

 

③ 内部統制の整備を進める。

監査を通し、内部統制の整備を進めることで、不正や誤謬の起きにくい安定した業務体制及び統率のとれた法人組織を整備することができる。

 

④ 会計監査人の視点から経営や法人組織の統制に関するアドバイスを受けられる。

監査を通じ様々な資料の提供、意見交換を行うことになるため、会計監査人という外部の立場の者から様々な気づきを共有してもらうことができる。

 

⑤ 各課の業務意識の向上や不正の抑制に資する。

従業員レベルにおいても監査を受けているという意識から、日常の業務に対する正確性や責任感の向上や、不正行為に対する抑止力が働くという副次的効果が期待できる。

 

反対にデメリットとしては以下のような点が挙げられます。

【デメリット】

① 監査報酬がかかる。

任意監査とはいえ実施する内容によっては法定監査と同水準の監査報酬がかかることになる。

 

② 監査に対応するためのコストがかかる。

監査を受けることで、監査に対応するための人件費や、内部統制を構築するためのコスト等、対応に時間と費用がかかる。

 

③ 医療法人や社会福祉法人では上場会社のように株価の向上といった直接のメリットが少ない

上場会社とは異なり、医療法人や社会福祉法人では株主という概念がないことから、監査による信頼向上の受益者が一定範囲に制限されるため、上場会社のように広く市場に信頼性を与えることによる株価の向上や維持といった直接のメリットは薄いといえます。

 

 

Ⅳ.おわりに

本コラムでは、法定監査になる前に任意で監査を受けるメリット・デメリットについて説明させて頂きました。

監査はコストというイメージから任意監査をそもそも検討すらしていらっしゃらない法人も多いのが現実ですが、今後法定監査の基準が拡大していく流れもあり、また法人ガバナンスの向上や上記で上げたようなメリットもございますので、法定監査になる前に任意監査に関しても一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。

 

弊社では医療機関の監査、医療機関経験が豊富なコンサルタントが在籍しております。本コラムへの質問や詳しい内容など、是非ご相談ください。

 

※本コラムは、2023年11月9日現在の法令・通達等を前提に記載しております。

 

ご相談はこちらから

 

会計顧問のサービス案内はこちら➩https://tax.gcf.co.jp/service/accounting-tax-advisor/

法定監査のサービス案内はこちら➩https://tax.gcf.co.jp/service/statutory-audit/

 

 

筆者:齋藤 利弘(さいとう としひろ)

税理士法人G.C FACTORY

公認会計士

Big4といわれる大手監査法人にて上場企業の監査やIPO監査を経験。また非営利法人では社会福祉法人、学校法人、独立行政法人といった様々な法人形態の医療・介護クライアントを中心に会計監査や内部統制の指導等を経験し、G.C FACTORYに入社。現在は医療介護関係に特化し、税務、会計、デューデリジェンス、自計化支援等幅広く支援を実施している。

 

同じカテゴリーの記事

クリニック、必要最低限の収益 

法定監査業務

当院の最低限必要な収益を教えてください!

会計監査 二重責任の原則 独立性 仕訳 決算 財務諸表

法定監査業務

会計監査のおける二重責任の原則について

医療機関に過料が課せられるケース解説

法定監査業務

医療機関に過料が処せられるケース

お問い合わせ

医院経営にまつわるお困りごとは
税理士法人G.C FACTORYへ。
まずはお気軽にお問い合わせください。

お電話をいただいた場合は、担当部署を確認し、後ほど折り返しいたします。