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法定監査業務

会計監査のおける二重責任の原則について

会計監査 二重責任の原則 独立性 仕訳 決算 財務諸表

 

Ⅰ.はじめに

本コラムでは、監査を受けている会計監査人に仕訳や決算数字を作ってもらうことの是非について説明していきます。
実際、監査実務においては、被監査法人(クライアント)から「正しい仕訳をメールで送ってください」や、「決算数字を計算して教えてください」と言われることがあります。
この点監査を受ける法人におかれましては注意して頂きたい点がありますので、ご理解の上、監査を受けて頂くことをお勧め致します。

 

Ⅱ.二重責任の原則

公認会計士による会計監査は二重責任の原則の下に行われます。

二重責任の原則とは、財務諸表を作る責任は経営者(企業側)にあり、公認会計士にはそれを監査する責任がある。という財務諸表の作成者と監査者を明確に区分する原則です。

監査の信頼性を担保するうえで監査人の被監査対象からの独立性は非常に重要なファクターになります。自ら作成した財務諸表を自ら監査して問題ないと意見表明しても、そこには信頼性はなくなってしまうからです。

この原則の下、監査が行われるからこそ、Ⅰで記載したような「正しい仕訳をメールで送ってください」や、「決算数字計算して教えてください」といったご要望には慎重に対応させて頂くことになります。

監査人が仕訳を作ったり決算数字を作るというような状況になってしまっては監査の大原則である二重責任の原則が成立しなくなってしまうのです。

 

日本公認会計士協会;https://jicpa.or.jp/cpainfo/introduction/keyword/post-31.html

 

 

Ⅲ.指導機能

では、被監査法人では会計監査人に指摘をされた際には、正しい処理について監査人に助けを求めることはできず、すべて自力で対処するしかないのでしょうか。

この点、答えはNoです。

監査には批判機能と指導機能というものがあります。

それぞれの意味は以下です。

 

批判機能

監査人が企業の公表する財務諸表の適否を、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に照らして批判的に検討する機能

 

指導機能

監査人が被監査会社に対し会計処理の欠陥等につき必要な助言・勧告を行い、被監査会社が適正な財務諸表を作成するよう指導する機能

 

この指導機能の発揮により、監査人は被監査法人に対し正しい処理の助言をすることができます。ですので被監査法人におかれましては、監査人より指摘が入った際には正しい処理に修正するためにはどのように処理をすればいいのか助言を求めて頂いてOKということになります。

ただし、上記の二重責任の原則がございますので、あくまで財務諸表(その一部である仕訳や決算数値も)を作るのは被監査法人であるという認識だけはしっかりとご理解されたうえでしっかりと助言を求めて頂ければと思います。

 

二重責任の原則 独立性 財務諸表 作成 作成者 監査者 明確 区分

 

Ⅳ.おわりに

今回のコラムでは監査を受けるうえで是非しっかり理解しておいて頂きたい被監査法人と監査人の立場を明記している二重責任の原則について説明させて頂きました。

あくまで財務諸表を作成するのは被監査法人であるということをしっかりと意識していただくことで、その法人の経理力の向上にもつながり、また実効性のある監査の実施が可能になりますので、監査を受ける際には二重責任の原則をしっかり理解された上で、最大限に監査を有効利用頂ければと存じます。

弊社では医療機関の監査、医療機関経験が豊富なコンサルタントが在籍しております。本コラムへの質問や詳しい内容など、是非ご相談ください。

 

※本コラムは、2023年11月9日現在の法令・通達等を前提に記載しております。

 

 

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筆者:齋藤 利弘(さいとう としひろ)

税理士法人G.C FACTORY

公認会計士

Big4といわれる大手監査法人にて上場企業の監査やIPO監査を経験。また非営利法人では社会福祉法人、学校法人、独立行政法人といった様々な法人形態の医療・介護クライアントを中心に会計監査や内部統制の指導等を経験し、G.C FACTORYに入社。現在は医療介護関係に特化し、税務、会計、デューデリジェンス、自計化支援等幅広く支援を実施している。

 

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